【麻雀マスターズ2017 in シドニー】4位入賞 鈴木聡一郎プロ 決勝自戦記 -前編-
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【麻雀マスターズ2017 in シドニー】4位入賞 鈴木聡一郎プロ 決勝自戦記 -前編-

総勢336人が参戦した2日間に及ぶ全16半荘の闘牌、国際麻雀大会「麻雀マスターズ2017」がシドニーで開催(4/22-24)された。6名の日本人プロが挑戦した本大会、鈴木聡一郎プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会 所属)が日本人トップの4位に上り詰めた。大会ルールは非常にシンプル、リーチ麻雀の熟練者ならば十分対応は可能である。だがしかし、鈴木たろうプロ、小倉孝プロを始め、日本のプロが苦戦を強いられることになる
実は鈴木聡一郎プロ、去年の2016年大会でも3位入賞の好成績を残しているのだ。前回に引き続き今回も上位入賞を果たし、連荘で大きな賞金を掴んでいる!
日本人プロは麻雀の技術力で決して引けを取っているわけではない。ではなぜ聡一郎プロが抜きん出るのか?何が違うのか?今大会では氏より「直筆の自戦記」を提供して頂いた。記を足掛かりに鈴木聡一郎プロの思考回路に迫ってみよう!
- 前編 -

Mahjong Masters 2017 Sydney 決勝自戦記 鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)

日本人プロ参加者

  • 鈴木聡一郎プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)
  • 鈴木たろうプロ(日本プロ麻雀協会)
  • 小倉孝プロ(日本プロ麻雀協会)
  • 大澤ふみなプロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)(特別招待枠争奪戦優選手)
  • 白田みおプロ(RMU)
  • 桐山のりゆきプロ(日本プロ麻雀協会)

一般参加者

  • 竹崎真央さん(一般応募枠 麻雀豆腐招待選手)

配牌に対する印象が全く逆

第1感でかまわない。
この配牌をどう思うだろうか?
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タンピンになりそうで、すぐにそこそこのリーチがかかりそうな、かなり良い配牌に映るのではないだろうか。
では、こちらはどうか。
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遠くにチャンタや789の三色が見えるが、あまりに遠く、鳴かないとアガリは厳しいように見える。正直に言って、良い配牌とはとても言えないだろう。
それが、日本で「麻雀」を打ち慣れた者の正常な感覚である。

しかし、今私が打っているシドニーの”Mahjong”においては、これらの配牌に対する印象が全く逆になる。
すなわち、1つ目のタンピン形の配牌が悪く見え、2つ目のバラバラな配牌のほうが良く見えるのである。
なぜか。
それはルールの違いに起因する。
詳しくは、昨年私が書いたこの記事↓を見てもらうとして、基本的な項目だけを下記に抜粋しよう。
Mahjong Masters 2016 in Sydney 決勝戦自戦記

日豪のルールの違い

  • 1.手役が違う
  • 2.点数計算が違う
  • 3.連荘がない(1半荘は必ず8局)
  • 4.常に15点縛り
  • 5.フリテンがない

1.手役が違う

まず、手役が大きく違う。
手役と得点の一覧はこちら↓
<画像.3>
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<画像.4>
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※最高位戦HPより転載

特徴的なのは、基本的に鳴いてもほぼすべての役が成立するということ。
イーペーコーも、ピンフも、鳴いてOK。
特にピンフに至っては、4順子1雀頭があればよく、牌種や待ちは一切問わない。
また、ドラやリーチは存在しない。

2.点数計算が違う

符計算などという煩わしいものはなく、あるのは手役によって決められた点数の加算のみ。
例えば、タンヤオ三色なら、5+35=40点。
ただ、40点をもらうわけではなく、もらえる点数は必ず点数の3倍となる。
40点なら、40×3=120点のアガリというわけだ。

また、点数の払い方にも特徴がある。
例えば、AがBに40点を放銃したとしよう。
得点は必ずアガリ点の3倍になるため、40点×3で120点をAがBに払うかと思いきや、そうではない。
アガリが発生した場合、今回の大会では30点までは放銃者以外も負担する必要があるのだ。
つまり、この場合、アガリとは関係ないCとDが30点ずつ払い、残りの60点を放銃者Aが支払うという仕組みだ。
そのため、誰かが放銃しても必ず持ち点が減る。
結果として、オリることの価値が低くなるため、前のめりになり、アガリが生まれやすくなっている。

3.連荘がない(1半荘は必ず8局)

また、オヤでも得点が変わらず、連荘がないため、1半荘は必ず8局で終わることとなる。

4.常に15点縛り

日本の1翻縛りのようなもので、シドニーでは15点縛り。
すなわち、15点以上の手牌でなければアガれない制約があるため、相手のアガリ役を絞り込みやすくなっている。

5.フリテンがない

以上のように、手役を作ることが肝になるルールであるため、日本麻雀に比べ、当然に片アガリが多くなったり、フリテンが激増する。
そこで、それらをアガリやすくするため、フリテンや食い替え規制はない。

基本思考

以上のルールを踏まえると、基本思考はこうなる

  • 1.局数が少ないため、高打点を狙っていく。
  • 特に、出現率がそこそこあって高得点のジュンチャン(チャンタ)かチンイツ(ホンイツ)を狙うため、基本は中張牌からの切り出しとなる

  • 2.放銃しなくても点数が減るため、基本的にはアガリに向かっていく
  • 3.ただし、ジュンチャン三色、チンイツ、三色同刻、日本の役満はかなり高得点であるため、それらが相手に入っていそうなときにはある程度ケアする

このように考えると、冒頭に出した2つの配牌の見え方もかなり変わったのではないだろうか?
遠くに高得点のチャンタ三色が見える2枚目のほうがかなり良い。
というより、1枚目のほうは三色かイーペーコーがないと15点に満たない可能性がかなり高く、さほど良い配牌とはいえない程度の配牌なのである。

そんなルールで行われる今大会、336人で始まった大会も決勝戦の32人に絞られていた。
決勝は、32人が1半荘ずつランダムなメンバーで4半荘打ち、4半荘の合計点で順位が決まる仕組みだ。
賞金としては、1位が約400万円、2位が約160万円、3位が約120万円、以下決勝に残った32人に賞金が分配される。
私は昨年3位であるため、それ以上の順位を狙いたいところ。

1半荘目:希望のマイナス150

全4半荘中の1半荘目、1度もアガれずに終わってしまう。
いわゆるヤキトリを食らってしまった。
しかし、とにかく仕掛けて前に出ることで相手をけん制し、流局で凌いだ。
例えばこれ。
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こんな3巡目に9mポンから入る。
マンズの一色手や8の三色小同刻トイトイなどを見た仕掛けだ。
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そして、もう1人マンズをやっているトイメンの上家が打ち出した6mをすかさずカン。
邪魔カンと同時に、自分の手牌が二カンツになる可能性を追った。
結局この手牌はここまでとなったが、字牌やマンズ、生牌を切ることに対して負荷をかけたことにより、周りを受け気味にさせることに成功している。

このルールではこういった相手へのけん制もかなり重要で、アガれないまでも、できることをやり切った結果、マイナス150で1半荘目を終えた。
8局すべてが横移動でも200~300ポイント以上失うのが相場である。
そう考えると、ヤキトリ半荘をマイナス150で凌いだのはかなり優秀だということがわかるだろう。

打てている。
それが私のこの半荘に対する自己評価だった。

これはきっと、絶望のマイナス150ではない。
次につながるマイナス150である。
そう言い聞かせた。
焦りはみじんもない

1半荘目 ▲150

2半荘目:起死回生のチンイツで上位進出!

焦りがないとはいえ、ここでプラスできなければ、状況はかなり厳しくなるだろう。
ひとまず、アガれる手牌がほしい。
そんな思いで取った配牌がこれ。
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2巡目の時点で、かなりアガれそうな気がしている。
1巡目、4pを2人が切り、自分の目からピンズのイッツーと456の三色が消滅したからである。
5pは、おそらく全ヤマで、ピンズのイーペーコーができればひとまずタンヤオか役牌+イーペーコーの15~20点ぐらいにはなりそうだ。
しかし、そこは百戦錬磨の地元雀士たち。
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すかさず先制攻撃。2pと6mポンの2フーロでけん制してくる。
加カン かさらにポンしてのトイトイ狙いの仕掛け。
だが、この仕掛けで周りの速度が若干落ちたのと同時に、手牌構成がさらに読みやすくなった。
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4mも5pもおそらく2枚ずつぐらいヤマにいる。
両面の5sから迷わず仕掛けた。

すると、上家がさらにポンしてさすがにトイトイテンパイ。
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だが、打点が低いため、こちらも4mを引いて自信のカン5p待ちで真っ向勝負。
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すぐに5pを引いてタンピンイーペーコー、60点(=20点×3)の初アガリが決まった。

構想通りのアガリに気分を良くし、今度はこの6m7m8mの両面チーからスタート。
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678の三色か、7mからさらに6m7m8mのイーペーコーを作る構想である。

しかし、下家にこんなメンピン三色確定の強烈な両面テンパイ。
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このルールでは、片アガリや愚形待ちが多くなるため、両面待ちはかなり強い。

そんなテンパイが入っていることなど全く知らず、真っすぐに三色に向かうと、2sチーの後に8pツモアガリ。
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相手のメンピン三色をかわしての価値あるピンフ三色120点(=40点×3)で、マイナスを完済した。

すると、今度は開けた手牌にソウズが7枚。
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これは、もうチンイツ狙いである。
1巡目に切られた1sポンから入った。
さらに高打点を狙うなら、1sチーでイッツーを残す手組もあるが、ここは2s3s4s5sという連続形にアガリやすさを求めていく。
すると、このアガリ感覚が見事に的中。
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すぐに3sを引いて4sチー、さらにツモ4s9sの後に4sをチーしてテンパイを組むと、ヤマにごっそり生きていそうな8s待ちをあっさりツモって300点(100点×3)のアガリ。
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この300点というのは、日本の打点感覚でいえば倍満~3倍満程度に相当する高打点であり、一気に上位進出を果たした。

さらに快進撃は続く。
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日本麻雀でもよく登場しそうな何切る。
4p切りなら、何を引いてもメンタンピンになるのだが、打点が低い。
場を見渡せば、中頃がほどよく切れており、5が絡む三色者はいなさそうである。
そこで、打8pとし、567の三色とピンズのイーペーコーを追うこととした。

またもや、これが見事にはまる。
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5sを引いてテンパイすると、終盤ながら8mを見逃し、自信の2m5mに勝負をゆだねた。
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こんな3フーロ者がいたのだが、上家から出た2mは私の頭ハネ。
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メンタンピン三色の150点(=50点×3)を加点し、+390の4位で折り返した。

2半荘目 +540
合計 +390

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Mahjong Masters 2017 Sydney Photo Gallery

日本人プロ参加者

  • 鈴木聡一郎プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)
  • 鈴木たろうプロ(日本プロ麻雀協会)
  • 小倉孝プロ(日本プロ麻雀協会)
  • 大澤ふみなプロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)(麻雀豆腐の特別招待枠争奪戦優選手)
  • 白田みおプロ(RMU)
  • 桐山のりゆきプロ(日本プロ麻雀協会)

一般参加者

  • 竹崎真央さん(麻雀豆腐の無料招待イベント当選選手)

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