ベラージオ・ラスベガス、売られる。
【写真はLas Vegas Review Journal HP】
MGMリゾート・インターナショナル社は、昨日(2019年10月15日)ベラージオ・ラスベガスが$4.2ビリオン(約4,500億円)でBlackstone Group社とそのジョイントベンチャー投資家達へ売却すると発表した。このベラージオ・ラスベガスが建っている土地の不動産と建設物がこの中に含まれているが、売却条件としてBlackstoneからベラージオ・ラスベガスの経営権を持続させるというものである。30年契約のリースとなるが、最初のMGMがBlackstoneへ支払う「レンタル料」は、年間$245ミリオン(約250億円)だそうだ。MGMは、合弁会社の5%の所有権と約4200億ドルの現金を受け取ることになる。取引はこの年末までに完了する予定である。
Blackstone社はニューヨーク市をベースにしている、金融会社の大手である。億万長者のステファン・シュワルツマン率いるブラックストーンは、長年にわたってラスベガスで不動産を買いまくっている。ベラージオを購入したことで、ストリップ(ラスベガス大通り)でMGMの最大のマネーメーカーの一つであったリゾートの大家さんになったことになる。
ベラージオ・ラスベガスは
1998年、デューンズの跡地にスティーブ・ウィン氏によって作られた。ラスベガス大通り(ストリップ)とフラミンゴ通りの交差点(ラスベガスの銀座4丁目)の南西に位置している。2000年、MGMはスティーブ・ウィン所有だったミラージュ・リゾーツを$4.4ビリオン(約4800億円)で買収した際、このベラージオも手に入れた。野外の噴水ショーはラスベガスへの観光客は必見のアトラクションであり、フロントデスク奥にあるコンサバトリーは屋内の植物の素晴らしいディスプレイが作られていて、インスタ映えする風景の一つとしてあまりにも有名である。そのBellagioは、3,900室以上の客室と155,000平方フィートのカジノスペースを備え、77エーカーの敷地である。
Circus Circusの売却も合わせ、借金を削減し、日本でのプロジェクトの追求、スポーツ賭博、カジノ以外のエンターテイメントなど、「資本をより収益性の高い投資に再配置する」ことが出来ると言い、同社は「より機敏、資産を軽く」の経営方針に移行していると追記した。MGM Resort International会長、ジム・ミューレン氏
これらのリゾートは昨年、MGMのラスベガスの持ち物の中で営業収入において上からの2つであり、2つを合わせると計710ミリオン・ドル(約780億円)だった。
このようなマネーメーカーを何故MGMリゾーツは手放す結果となったかの理由ははっきりとは発表されてはいないが、何となくではあるが幾つか想定できる。
♠ 2017年10月1日の夜、ラスベガス・ストリップのルート91ハーベスト・ミュージック・フェスティバルにおいて、向かい側に聳え立つマンダレイ・ベイ・ホテルからコンサートの群衆に軍事用自動ライフルを使用しての大乱射事件があった。58人死亡、422人が直接負傷し、そのパニックにより合計851人が負傷した。2019年10月3日、MGMリゾーツは銃撃の犠牲者と$735ミリオン(約750億円)から$800ミリオン(約870億円)(推定)で和解に達した。マンダレイベイへの特上顧客(ハイローラー)であった犯人は、殆どセキュリティチェックなしで、凄まじい量の武器弾薬を32階のスイートルームへ運び入れた。これに対するホテル運営側の責任問題についてである。
♣ 2019年の春、会社再編の一環として、マネージメント以上の従業員を1033人解雇した。この変更はMGM 2020の再編計画の一部であり、同社は年間調整済みEBITDA(利子、税、減価償却費、償却前利益)を$300ミリオン(約328億円)とするとし、そのうちの$200ミリオンを2020年末までに、さらに$100ミリオンを2021年までに計上する予定であった。ただ、ここで首になった従業員の殆どは「サラリーエンプロイー」で、年収が基本になっていて、更に複数年の雇用契約を会社と結んでいる。契約中の雇用期間内にレイオフされれべ、期間の残りのサラリーは勿論のこと、他の福利厚生の一部も保障されている。よって、1000人以上を解雇した途端に、その分をセーブ出来る訳ではなく、かえって一時的な支出は何倍にもなることになる。
♥ 「やるやる詐欺」であると言っても過言ではない、日本のカジノ付きIRへの運営権取得競争への参加である。日本でカジノを合法にすると言ってから数十年。法律が変わってからも既に数年が経つ。誰も責任を取りたくないのか、利権を誰が貰えるようにするのか、などを長時間かけて考えている間に、ラスベガスの住民は多大な被害を被っている訳である。MGMリゾーツ側からの一方的な参加希望であり、日本政府が勧誘した訳ではないのは分かっている。それにしても動きが鈍すぎる。今回のMGMリゾーツのレイオフの中に入ってしまい、家族でラスベガスを出ていった人も少なくない。既に年収2000万円近く稼いでいて、生活水準をそのようにしてしまえば、今更それ以下にすることは困難である。40代後半であれば、子供達が大学へ行く歳であり、アメリカの大学の学費は尋常ではない程高い。学生ローンの平均額は一人$ 31,172である。現在のアメリカのカジノ業界の風潮で、親会社の経営陣は弁護士と会計士が多いらしい。カジノの現場の経験者は殆どいない。会社経営には「下積み」は必要ないとしている。アイビーリーグや名門大学、MBA取得者のみでの経営母体を作っている。ニューヨーク市場に上場している。今までのカジノ・エクゼクティブの給料が高すぎた為に新しいカジノ業界のスタンダード(基準)をおったてる為かもしれない。
どれをとっても、カジノ業界が新しい過渡期に突入したのかも知れない。マス・シューティングで大勢の犠牲者を出すような事もフランク・シナトラやエルビスが闊歩していた頃のラスベガスでは無かった。4000室以上もあるホテルもなかったので、従業員も少なく、大きなアトラクションも設備も必要なかった。ラスベガス以外にはアトランティック・シティぐらいしか他にカジノはなかったので、他の都市や国への侵略作戦も必要なかっただろう。古き良き時代であった。日本のバブル景気がミラージュ・カジノを作ったと言われている。日本人ハイローラーがミラージュの柱一本一本の建設費用を出したと言われている。紛れもなく本当の話であると思う。ミラージュはもう既にアジア人ハイローラープログラムは扱っていない。諸行無常の鐘の音である。
ベラージオ・ラスベガスにおける従業員、営業内容などは変更ないとしている。
ブラックストーンの激しい買収合戦
過去数年間、南ネバダ州で、ブラックストーンは安価な家を大量に取得してレンタルに変え、68エーカーのヒューズセンター・オフィスパークを3億4,700万ドル、ラスベガスのコスモポリタン・カジノは$1.7ビリオン(約1700億円)、ダウンタウンの540万平方フィートのワールドマーケットセンターの家具ショールームホールも(未公開の金額)買収しまくった。また、数億ドルを費やして地元のアパートを購入している。
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