北海道・留寿都村の大自然とカジノ
平成29年11月30日 可能性調査住民説明会。2020年以降に本格的にカジノが日本にやってくる!?2016年にIR推進法案が可決して以来、候補地選びに熱が入ってきました。北は北海道から南は沖縄まで。今回は苫小牧や釧路に続き北海道・留寿都村のIR構想をご紹介します!
IR推進法案が可決され、2020年ごろに日本でも本格的カジノが完成するかもしれません。麻雀豆腐では様々なIR構想をご紹介してきましたが、今回は北海道・留寿都村のIR構想です。留寿都村はアイヌ語で「ル・スツ」(道が山のふもとにあるという意味)という言葉から来ています。観光などで有名な自治体で、新しいカジノ構想が提案されることを期待します。
ルスツリゾート 加森観光とNISADEが戦略的開発提携~IRも視野
11月19日、加森観光とNISEKO ALPINE DEVELOPMENTS(ニセコ・アルパイン・デベロップメンツ、NISADE)は、ルスツリゾートの戦略的開発に向けた提携を発表。開発の第1期は約2億米ドル相当であり、高級ホテルThe Vale Rusutsuと特注の温泉・保養施設を含む
2018年に公開予定の次の段階は、新商業・娯楽開発地区と新たな宿泊施設などで、約5億米ドルと推計されている
(カジノIRジャパン 2017-11-21「誘致レース(230)留寿都村=ルスツリゾート 加森観光とNISADEが戦略的開発提携~IR視野」 より転載) リンク:http://casino-ir-japan.com/?p=18153
北海道においてIR候補地が3つほどあります。苫小牧市、釧路市、留寿都村の3つであり、北海道はその中から一本化する方針を発表しました。
・7月6日、北海道新聞は、北海道がIR候補地を一本化する方針と固めたと報じた「誘致レース(150)北海道=3候補地から一本化の方針 IR実施法成立後、有識者会議を設置へ」
(カジノIRジャパン 2017-07-07【国内ニュース】 より転載) リンク:http://casino-ir-japan.com/?p=17267
1. 統合型リゾート(IR)概要
2016年12月15日に「カジノ法案」正式には「IR推進法案」が衆院本会議で自民党や日本維新の会などの賛成多数で可決され成立しました。法案成立後、約1年以内、2017年12月までに依存症対策などの具体的な制度設計を盛り込んだ「IR実施法案」が国会に提出される予定です。
-2017/12/5 現在、「働き方改革・カジノ設置…重要法案、来年に先送り 」となっています。遅れや影響の懸念がでています。
重要法案、審議棚上げ
安倍晋三首相が28日召集の臨時国会冒頭での衆院解散を正式に表明したことで、「働き方改革関連法案」やカジノを解禁する「統合型リゾート(IR)実施法案」などの重要法案の審議は棚上げとなった。衆院選後の国会は、年末の来年度予算編成を控えて短い会期にならざるを得ず、多くの法案審議が来年の通常国会以降に先送りされそうだ。
(毎日新聞 2017年9月25日 21時29分(最終更新 9月26日 10時38分)「重要法案、審議棚上げ」 より転載) リンク:https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170926/k00/00m/010/065000c
「推進法案」は、あくまで「実施法案」のアウトラインで、具体案は実施法案に盛り込まれます。まずは総合型リゾート(IR)の基礎知識としてMICEという概念があります。名称と内容を確認しましょう。
名称の確認
- カジノ法案 = IR推進法案
2016年12月に衆院本会議で成立 - IR実施法案
2017年12月までに国会への提出を予定 - IR推進法案
(正式名称:特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(平成28年法律第115号)) - IR推進本部
(正式名称:特定複合観光施設区域整備推進本部) - IR推進会議
(正式名称:特定複合観光施設区域整備推進会議)
M は Meeting(会議・研修)、
I は Incentive(招待旅行)、
C は Conference(国際会議・学術会議)、
E は Exhibition(展示会)または Event、
これら4つの頭文字を合わせた言葉です。
2. 北海道とIR
北海道では2015年に「北海道型IR検討調査報告書」を公開し、横浜や大阪などと共に誘致合戦に本格的に乗り出しました。その北海道の中で「苫小牧」「釧路」「留寿都村」3つの候補地があります。
つづいて北海道が掲げるIR構想をみてみましょう。北海道3候補地のベースとなっています。
北海道・候補地(苫小牧、釧路、留寿都村)
- 苫小牧市=経済波及効果2850~4650億円 雇用創出2万6800~4万4100人 年間利用者数223~378万人
- 釧路市 =経済波及効果1570~1950億円 雇用創出1万4300~1万8100人 年間利用者数 25~ 40万人
- 留寿都村=経済波及効果1681~2865億円 雇用創出2万4520~2万6523人 年間利用者数150~206万人
(カジノIRジャパン より転載)
http://casino-ir-japan.com/?p=17898
留寿都村はニセコとならびスキーヤーに人気のスポットです。一方釧路は周辺に摩周湖や阿寒湖などがあり、温泉場としても人気スポットです。ただし、釧路は新千歳国際空港からやや遠く距離があり、他の候補地と比べるとやや不利な点でしょうか。横浜や大阪などの候補地の資料を見ても、空港や港が近くにあることがポイントとして挙げられています。
経済効果を検討するためには、本道で導入する場合のIRの姿(投資額、規模、機能構成など)を想定する必要がある。この調査においては、道内で複数の自治体で誘致を検討している事情を踏まえ、北海道型IRとして3つのモデルを想定した。
注:以下に示す3モデルは、いずれも具体的な用地や基本構想・計画などに基づくものではなく、あくまでも「このような前提に立てば」との経
済効果検討に資するモデルであることに留意。
(北海道型IR検討調査報告書〔概要版〕平成27年3月 より転載)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/IR_report_abstract2.pdf
3つの候補地の方向性も示されています。
苫小牧、留寿都村、釧路それぞれみてみましょう。
苫小牧市【道央圏】
拠点空港隣接型国際拠点空港に隣接し広大な用地を活かしたIR
●拠点空港に隣接し、人口集中地区にも近い。近隣に既存観光施設が少ないことから、新たな大規模設備投資が期待される。
●観光入込数は184万人(宿泊延べ数17万人)で、隣接する新千歳空港には1,900万人を超える利用者がある。
●比較的平坦で広大な用地が確保可能。
留寿都村 【道央圏】
高原リゾート型雄大な自然と多様なアクティビティを活かしたIR
●パウダースノーで知られる国際的なスキーリゾートエリアであり、外国人観光客が増加している。
●観光入込数は148万人(宿泊延べ数38万人)で、様々なアクティビティなどにより入込の季節格差解消を目指している。
●既存観光施設との連携が期待でき、広大な用地確保が可能。
釧路市阿寒湖温泉地区 【釧路根室圏】
エコリゾート型北海道固有の先住民族の文化や優れた自然を活かしたIR
●北海道を代表する景勝地である(国立公園)阿寒湖地区は、温泉、アイヌ文化などを活かした滞在型温泉観光地である。
●観光入込数は107万人(宿泊延べ数57万人)で、ピーク時から減少しており、地域資源を活かした新たな魅力の開発に取組んでいる。
●観光施設との連携が期待できる。なお、国立公園内であり、敷地規模は一定の制約がある。
上記3候補を候補地に設定するために北海道は現状と課題を挙げています。
現状
- 国内市場の縮小、消費額の伸び悩み
日本は人口減少社会に入っており、国内市場は縮小が避けられない。 - 繁忙期と閑散期のギャップ
観光入込数の季節格差は大きく、谷間対策、平準化が求められている。 - 観光客の道央圏集中
交通体系、大都市札幌の存在などの要因で道央圏に観光客が集中。
課題
- 海外市場からの誘客促進
外国人観光客の受入環境の整備、富裕層誘客による観光消費額の拡大 - 新たな誘客視点
MICE等による閑散期への集客、雇用の通年化 - 観光資源・受入環境整備
全道各地での観光資源の磨き上げ、二次交通の充実、長期滞在型の観光コンテンツづくり
3. 候補地「留寿都村」とコンセプト
3つの候補地のベースとなる北海道のIR基本コンセプトを確認しました。続いては「留寿都村」のコンセプトや検討内容です。
まずは「留寿都村」の地理的確認です。
公式ホームページによると留寿都村は、札幌市内から車で約1時間30分、新千歳空港からも約1時間30分ということです。北海道各所からほどよい距離感といったところでしょうか。
アクセス【車】
- 札幌から(R230) 1時間30分
- 室蘭から(R37・R230) 1時間30分
- 新千歳空港から(道道37・R276・R230) 1時間30分
- 苫小牧から(R276・R230) 1時間30分
- ニセコから(道道66) 30分
- 洞爺湖から(R230) 30分
(引用元:留寿都村ホームページ http://www.vill.rusutsu.lg.jp/hotnews/detail/00000237.html)
留寿都村IR検討の背景
留寿都村、および後志振興局は、北海道全体の傾向と同様に、⼈⼝減少、主産業(農業等の第1次産業)従事者の⾼齢化、国内レジャー⼈⼝減少に伴う観光業の先詰まりという課題に直⾯しています。
(引用元: 平成29年11月30日 可能性調査住民説明会)
留寿都村周辺地域 課題現況課題
- ⼈⼝減少傾向
- 主産業従事者の⾼齢化
- 国内⼈⼝減に伴うレジャー⼈⼝の減少
- ⼈⼝減に伴う公共交通機関の便数減 等
上記課題により「産業振興の⾏き詰まり ⇒ 税収減による、⾏政サービス低下の懸念」ということが想定されています。地域・産業振興が行き詰まると行政サービスが低下します。そのための、具体的な対策がもとめられています。
これに対し、留寿都村の優位性はどのようなことがあるのでしょうか。
留寿都村周辺地域 現状優位性
⼀⽅、留寿都村周辺は四季を通じた豊かな⾃然環境と、多くの観光客訪問の実績を誇っており、これらの観光資源を活かした統合型リゾート(IR)を導⼊することにより、地域振興を図ることが有望なエリアであると考えられます。
- 四季を通じた豊かな⾃然環境
- 多くの観光客の訪問実績
- 利便性 ⾼ 交通アクセス
- ⼟地開発の柔軟性
- カジノ施設導⼊による負の影響の⼩ささ
- 既存のルスツリゾートの活⽤
留寿都村IR基本コンセプト
現状把握のための課題と留寿都村の優位性を念頭に置いて、続いてIR基本コンセプトです。現状課題については、日本各地多くの自治体で同様な課題を感じていると思います。そしてその課題克服のための起爆剤としてIRの開設を、留寿都村も検討しています。
留寿都村では、地域の優位性を活かし留寿都村IRのコンセプトとして「四季折々の⾃然が楽しめるIR」、「留寿都村を中⼼に後志・胆振振興局全体と連携するIR」を推進する構想です。
コンセプト
- ①訪⽇する外国⼈観光客に潜在的にあるニーズとして訪問する各国でしか味わえない⾃然・⽂化を体験・楽しみたいことがあげられるが、⻑期的な滞在を視野に厳しい冬や雄⼤な新緑の季節と⽂化を楽しめる北海道独⾃の⼭岳型リゾートIRを推進する。
- ②留寿都村を中⼼とした後志・胆振地⽅と経済圏・観光圏の連携を持ったIRを推進する。
- ③1つ⽬2つ⽬のコンセプトを達成するために、留寿都村の持っている郷⼟⽂化・産業資源の保全を重視し著しく失わないことを前提とする。
(可能性調査住民説明会 より転載)
北海道IRコンセプトにもあったように、高原リゾート型IRを目指す方向と言えそうです。また、後志・胆振地⽅と経済圏・観光圏の連携をとることで、ニセコやその他有名なリゾート地も利用でき、海外からの観光客を取り込めるとみこんでいます。それにより、新千歳空港から比較的近い場所での高原リゾート型IRの実現も可能となるでしょう。
前掲 留寿都村IRのコンセプトに基づき、①カジノを楽しむ富裕層とともに②ファミリー層が楽しめる施設、および、③連携する地域の観光資源をアピールする施設も導⼊する計画となっています。
カジノ施設カジノルーム(⼀般向け・富裕層向け)
ファミリー層向け施設アウトドア型エンターテイメント施設(花畑、ウォーターパーク、キャンプ、農業体験、紅葉、スキー 等)
その他施設ホテル・MICE(展⽰場・会議施設)・モノレール(村中⼼部とIR施設を結ぶ交通⼿段)
地域観光資源のPR施設地域特産品ショッピング施設・地域観光情報の発信施設 等
IR導⼊による期待効果
IR導⼊により、留寿都村を中⼼した経済圏により、観光圏の発展による⼈⼝増・税収増を⾒込こんでいます。また、税収増によって、インフラ施設の整備や医療福祉の充実等、⾏政サービスの向上に繋なげることを期待しています。
(可能性調査住民説明会 より転載)
アウトドアを含めたエンターテインメント施設になると面白そうですね!新千歳空港からほどよい距離で自然にあふれた土地柄を最大限に利用できるよな提案がなされることを期待します!
4. 経済効果
留寿都村の場所や基本コンセプトをみてきました。続いては経済効果です。
IR導⼊による経済効果は、IR施設建設時に2,246億円、IR施設運営開始後は年間539億円~753億円程度が見込まれます。
施設建設時 | 施設運営時(年間) | |
投資額 約1,180億円 (インフラ整備含む) | シュリコマベツ4番地 | 売上⾼ 約553~730億円 (既存施設含む) 注1 ※IR訪問者数:150 206万⼈の想定 |
約2,246億円 | ⽣産誘発額 | 約539~753億円注2 |
約19,300⼈ | 就業誘発⼈数 | 約6,000~8,370⼈ |
注1:売上⾼は既存ルスツリゾート及び新規に建設するIR施設の合計額、新規に建設するIR施設の売上⾼のみから試算
注2:⽣産誘発額は北海道庁公表の「経済波及効果分析⽀援ツール」(平成21年延⻑表 109部⾨)に基づき、新規に建設するIR施設の売上⾼のみから経済波及効果を試算
と想定されています。
ゲーミング 売上⾼ | 約203~265億円 | 【⼀般客】 1回当り平均売上⾼ にIR来場者⾒込と1訪問当りのカジノ利⽤回数を乗じて試算。 ・⽇帰り客:1回当たり平均売上4,000円*1×約23 35万⼈×1訪問当たり1回利⽤ ・国内宿泊客:1回当たり平均売上6,000円*1×約67 89万⼈×1訪問当たり1回利⽤ ・海外宿泊客:1回当たり平均売上10,000円*1×20 26万⼈×1訪問当たり2回利⽤ 【VIP客】VIP客の売上⾼割合を、カジノ売上全体の50%と想定して計算。 |
ノンゲーミング 売上⾼ | 約350~465億円 | 【ホテル】約116~162億円(平均客室単価約35,000~37,000円/泊として試算) 【飲⾷】約75~101億円 【ショッピング】約66~87億円 【エンタメ】約72~93億円 【MICE】約22億円 |
IR売上⾼ | 約553~730億円 (既存施設含む) | ゲーミング売上の割合は約36 37% |
投資額 | 約1,180億円 (インフラ整備含む) | 想定される施設の延べ床⾯積と、jこれまでの留寿都村及び周辺地域の施設建設の事例を参考にした建設単価情報に基づき試算。 |
投資回収期間 | 7.1~9.3年 | = 投資額(約1,180億円) ÷ EBITDA(約127 167億円)*2 ※EBITDA:税引前利益に減価償却費と⽀払利息を⾜し戻した利益⽔準を表す値 |
*1. 1回当たり平均売上⾼=1回当たり掛け⾦×Win%。
1回あたり掛け⾦は「⽇帰り客:4,000円、国内宿泊客:6,000円、海外宿泊客:10,000円」、Win%は20%と想定。
*2. IR売上⾼×EBITDA Margin 22.9%の想定で試算。
5. まとめ
北海道・留寿都村のIR構想をみてきました。留寿都村は高原リゾート型IRをうたっています。北海道のパウダースノーは海外でも有名で、その強みを活かしたIRというのも面白そうですね。苫小牧は新千歳空港から近く、釧路は独自の文化を持つ地域があり、それぞれ違ったIRになるでしょう。留寿都村案は苫小牧や釧路に比べると少し物足りなさも感じます。他の候補地がIR誘致棚上げを発表したり、政府もカジノ法案の見送りを決定するなど良いニュースがあまりありませんが、北海道の3案には他候補にない興味深い提案をしてもらいたいものですね!留寿都村のIR構想の今後に期待します!