沖縄とIRカジノと美ら海と
沖縄統合リゾートモデルと カジノ・エンターテイメント - 沖縄県。2016年末にようやくIR推進法が可決し、早ければ2020年ごろのカジノオープンも現実味を帯びてきました。北海道に続き今回は沖縄です!美しいビーチや海、温暖な気候、美ら海にひめゆりの塔、訪れる理由はさまざまにありますが、沖縄にもIRカジノがやってくるかもしれません!
IR推進法が可決し2020年ごろにも本格的なカジノが日本でもオープンするかと話題になっています。最近では2025年ごろという予測も出てきていますが、候補地の最有力候補の一つが沖縄です。沖縄は日本の有数な観光地でもあります。観光地とIRカジノはかなりの親和性があると思います。少し前の記事になりますが、内閣府特命担当大臣・沖縄及び北方対策担当も沖縄におけるカジノ誘致に積極的な発言もしています。
鶴保庸介氏(内閣府特命担当大臣 沖縄及び北方対策担当)は、各紙において、沖縄県におけるカジノを含む統合型リゾート(IR)設置に前向きな見解を打ち出している。
9月20日の毎日新聞の発言は、大手新聞社がIR推進法の意図を伝えず、”カジノ”にフォーカスする傾向を踏まえ、「カジノ単体ではなく、統合型リゾート」「国が施設数を少数に限定・管理(IR議連「IR実施法案の基本的な考え方」では最大10カ所ほど)」を強調した。
(カジノIRジャパン 2016.08.05「沖縄・北方担当相 鶴保庸介氏「統合型リゾート(IR)が沖縄に必要だという意見には大賛成」」 より転載)
リンク:http://casino-ir-japan.com/?p=14451
1. 統合型リゾート(IR)概要
2016年12月15日に「カジノ法案」正式には「IR推進法案」が衆院本会議で自民党や日本維新の会などの賛成多数で可決され成立しました。「推進法案」は、あくまで「実施法案」のアウトラインで、具体案は実施法案に盛り込まれます。法案成立後、約1年以内、2017年12月までに依存症対策などの具体的な制度設計を盛り込んだ「IR実施法案」が国会に提出される予定でした。
-2017/11/5 現在、「働き方改革・カジノ設置…重要法案、来年に先送り 」となっています。遅れや影響の懸念がでています。
どの程度の影響が出るのかも含めて、引き続きIR関連のニュースをチェックする必要がありそうです。
まずは総合型リゾート(IR)の基礎知識としてMICEという概念があります。名称と内容を確認しましょう。
沖縄県でも、MICEを中心に置いたリゾートや観光を検討しています。
名称の確認
- カジノ法案 = IR推進法案
2016年12月に衆院本会議で成立 - IR実施法案
2017年12月までに国会への提出を予定 - IR推進法案
(正式名称:特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(平成28年法律第115号)) - IR推進本部
(正式名称:特定複合観光施設区域整備推進本部) - IR推進会議
(正式名称:特定複合観光施設区域整備推進会議)
M は Meeting(会議・研修)、
I は Incentive(招待旅行)、
C は Conference(国際会議・学術会議)、
E は Exhibition(展示会)または Event、
これら4つの頭文字を合わせた言葉です。
2. 沖縄とIR
沖縄では2007年よりカジノ・エンターテイメント検討委員会を設置し、沖縄県にカジノ・エンターテイメント施設を導入するために議論を重ねてきました。その後、2011年に「沖縄観光とカジノ・エンターテイメント」として公開されました。
沖縄統合リゾートモデルの検証
沖縄の魅力・ポテンシャル
①沖縄の美しい海を代表とする豊かな自然
②亜熱帯の温暖な気候風土
③多様な文化遺産
④沖縄の伝統芸能・沖縄社会と自然との調和
⑤健康・長寿・ゆったりとしたライフスタイル
必要な要素
①空港機能及び国際航空路線網の充実、VIP客専用サービスの充実、熟練スタッフの雇用、
②多言語能力のある人材育成
③観光関連支援・施策の充実
解決すべき課題等
①人口・国内産業が集中する大都市との競合
②沖縄の魅力を活かした国際観光の充実
沖縄統合リゾートモデルの再構築
利用者数の検証
- 特定複合観光施設区域整備法'IR議連会長私案(などに基づいて、オープン時期を2020年'H32(年頃に設定
- 観光客推計より平成32年度の観光客数を796万人と推計、観光客来訪率'49.5%(を乗じて得た数を観光客比率'82%(で割り戻し、沖縄統合リゾートへの来場者を490万人と試算
コンセプトの検証
- 沖縄の海を活かした「遊び」や「癒し」を、季節や天候を問わず提供する国際的海洋性リゾートの創造
- 国際交流の場として、コンベンション機能の充実や多様なエンターテイメントを導入、ビジネスからファミリーまで多様な顧客層に充実した時間を提供する複合型リゾートの創造
- 沖縄の気候・風土に根ざし、自然環境や社会・文化に調和したリゾート空間を形成
コンセプトの検証
- 沖縄の海を活かした「遊び」や「癒し」を、季節や天候を問わず提供する国際的海洋性リゾートの創造
- 国際交流の場として、コンベンション機能の充実や多様なエンターテイメントを導入、ビジネスからファミリーまで多様な顧客層に充実した時間を提供する複合型リゾートの創造
- 沖縄の気候・風土に根ざし、自然環境や社会・文化に調和したリゾート空間を形成
立地形態の検証
- 沖縄の自然環境を基盤とした郊外リゾート型、周辺施設連携型の提案
- 周辺の環境'市街地、郊外、リゾート地、自然豊かな地域、埋立地や軍用地跡地など(によっても、立地の形態は変動
- 空港・港湾との近接性や周辺に立地する観光施設、既存の観光地の状況なども立地に大きく係わる。インフラの未整備地域では、アクセス道路やライフラインの整備など莫大な費用を要する場合もある。
導入機能の検証
- 集客性→観光客数の増大に対する視点
- 採算性→観光消費の誘発・経済効果に関する視点
- 既存施設との関係性→既存の施設や産業との連携や調和に関する視点
- 近年の動向→各導入機能に関連する最新動向
- 再構築にあたっての課題→沖縄統合リゾート再構築で見直すべき点等
- MICE誘致型モデルは、滞在機能とコンベンション機能を中心に、ビジネスサポートやアフターコンベンション機能を展開
- アミューズメント・リゾートモデルは、滞在機能を中心に、非日常的な滞在空間と、多様な活動を展開
カジノ収益の利用
- 国についてはカジノ管理機能の運営、懸念事項・依存問題へ利用
- 地方公共団体については、地域環境の保全、地域振興等に利用
投資規模の検証
- 各導入規模の見直しにより総投資規模は縮小
- 滞在機能は、周辺施設連携型では既存施設と併せて5,000室に設定
- 郊外リゾート型も2,000室~2,600室に縮小
(沖縄統合リゾートモデルと カジノ・エンターテイメント – 沖縄県 より転載)
3. MICE誘致型とアミューズメント・リゾートモデル
沖縄のIR構想では、2つのモデルを元に議論が進められています。その2つとは「MICE誘致型(ビジネス層中心)」「アミューズメント・リゾート(ファミリー層中心)」となっています。2つの違いと運営効果をみてみましょう。
MICE誘致型
- 国際会議や研修・商談等の誘致 Meeting、Convention
- 30代~40代のビジネスマン
- 洗練された空間
アミューズメント・リゾート
- 報奨旅行、保養・休養・療養 Incentive、Event
- ファミリー、ヤングアダルト、リタイアメント
- 非日常的な空間
沖縄統合リゾートの建設及び運営効果
• 運営開始後の雇用誘発は、カジノを含む統合リゾートの建設による雇用誘発効果で約26,000人から約15,000人、カジノの営業開始後の雇用誘発効果は約28,000人から約15,000人と、それぞれ高い雇用誘発が見込める。
沖縄カジノ構想では、国のIR方針に沿って「沖縄統合リゾート」と名付けています。
続いてそれぞれの特徴をみてみましょう。
MICE誘致型モデル
将来ビジョンにおける位置づけ
- 新成長戦略における『アジア経済交流圏』におけるビジネス交流を推進
- 沖縄21世紀ビジョンにおける「世界に開かれた交流と共生の島、『21世紀の万国津梁』」の実現に資するものとして、アジアの中での沖縄の優位性を活かした国際交流を推進
- 沖縄21世紀ビジョン基本計画におけるMICEの推進
沖縄の優位性
- 那覇を中心に半径2,000km以内にアジア各国の主要都市を含む地理的な優位性
- 平和・交流、健康・長寿、芸能・文化、自然環境などの世界に向け発信すべきテーマが豊富
- 優れたロケーション、県民のホスピタリティ
- 日本の安心・安全、信頼性、治安の良さ
沖縄の課題と解決策
- 空路が主な移動手段となり、コスト面での課題が大きい
- 大規模都市圏から遠く、後背人口が尐ない。沖縄の優位性を活かし、意義づけやメリットを打ち出す
期待される効果
- 訪日外国人の増大、経済効果、地域の国際化・活性化に寄与
- 消費単価が高いとされるMICE客層による、アフターコンベンションにおける経済波及効果
- MICE開催により観光関連産業のみならず、展示・宿泊・会議等の多様な産業及び経済全体を活性化
- コンベンションを通した企業CSRツーリズム等の誘致
アミューズメント・リゾートモデル
将来ビジョンにおける位置づけ
- 新成長戦略における『アジア経済交流圏』における交流推進
- 沖縄21世紀ビジョンの「世界に開かれた交流と共生の島、『21世紀の万国津梁』」の実現
- 沖縄21世紀ビジョン基本計画における「世界水準の観光リゾート地の形成」
沖縄の優位性
- 非日常的なリゾート空間、健康・長寿・ゆったりとしたライフスタイル、恵まれたロケーション
- 自然環境、平和・交流、健康・長寿、歴史・文化、芸能・音楽などの国際的に価値のある多彩な観光資源
沖縄の課題と解決策
- 台風や不安定な天候に左右されず屋内で楽しめる観光メニューが必要
- 沖縄の健康志向を向上させた、医療ツーリズムとの効果的な連携を期待
- VIP客専用の上質なサービスの提供、海外客をもてなすスタッフの育成
- 琉球文化を基に世界に一つの沖縄・琉球IRの構築
期待される効果
- 沖縄の食材・食品をはじめ関連産業を育成、エステ・スパ等の健康関連産業の振興
- 長期滞在による観光消費の増大
- 保養・休養型のリゾートとしての価値の向上
それぞれの特徴は上記のように想定されています。経済や軍事的拠点としてだけでなく、文化や人々の交流の場、医療やエコなど時代に沿った最新技術の拠点にもなれるポテンシャルがあると感じました。そのポテンシャルを最大限に活かせる方法がみつかるとよいですね!
4. 候補地「海洋博公園・美ら海」
仲井眞弘多・前沖縄県知事の時期に、IRリゾートを誘致する動きが活発でした。具体的な候補地として、海洋博公園(美ら海)や普天間(名護自然動植物公園)などにIRを誘致する動きがありました。通称、美ら海カジノや名護カジノと言われています。
海洋博公園は美ら海水族館等でも有名で、海洋博公園は1975~1976年に開催された「沖縄国際海洋博覧会」の跡地に完成した公園です。72ヘクタールもの広さを誇り、沖縄の歴史や自然を学び体験できる公園となっています
今回は、そのうちの美ら海カジノの候補地としてある「海洋博公園」を写真でご紹介します!
海洋博公園
海洋文化館
おきなわ郷土村
熱帯ドリームセンター
美ら海水族館
エメラルドビーチ
海洋博公園 周辺ホテル
海洋博公園 周辺
5. 経済効果
最後に想定されている経済効果をご紹介します。
「これまでの調査・研究の概要」として「統合リゾートに関する検討について」にまとめられています。
経済効果試算結果のまとめ(平成22年度調査報告)
事業規模 | MICE誘致型 | アミューズメント・リゾート | ||
①郊外リゾート型 | ②周辺施設連携型 | ①郊外リゾート型 | ②周辺施設連携型 | |
オープン時期(仮定) | 平成32年 (2020年) | |||
沖縄統合リゾート来訪者数(県内客含む) | 4,900,000人 | |||
敷地面積 | 330,000㎡ | 260,000㎡ | 430,000㎡ | 210,000㎡ |
概算事業費 | 1,067億円 | 971億円 | 1,615億円 | 1,061億円 |
滞在機能客室数 | 2,600室 | 1,000室 | 2,000室 | 1,000室 |
沖縄統合リゾート直接雇用者数 | 7,000人 | 4,200人 | 9,100人 | 6,100人 |
統合リゾート全体収益 | 224億円 | 107億円 | 204億円 | 138億円 |
地方公共団体納付金(※) | 48億円 | 32億円 | 20億円 | 20億円 |
税収 | 31億円 | 15億円 | 28億円 | 19億円 |
県税 | 23億円 | 11億円 | 20億円 | 14億円 |
市町村税 | 8億円 | 4億円 | 8億円 | 5億円 |
生産誘発効果 (波及源泉+1次+2次) | 3,888億円 | 3,016億円 | 5,197億円 | 3,519億円 |
雇用誘発効果 | 4,0880人 | 30,932人 | 53,619人 | 36,483人 |
※地方公共団体納付金は、県と市町村分
6. まとめ
沖縄のIR構想を海洋博公園の写真等ご紹介しました。いかがだってでしょうか。
どの候補地も同じですが、時の為政者によって内容や誘致に掛ける熱量、方向性が変わってきます。最近の沖縄ではカジノではなくMICEによる海外旅行者の拡充を主に考えているようです。いずれにしても海外からのお客様に満足してもらうことには変わりはありません。豊富な観光資源やノウハウを持っている沖縄の今後の動向にさらに注目していきたいと思います!